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JAPANサッカーを支える企業
 
株式会社ワコール ウェルネス事業部 事業部長 松井恒夫
京都サンガF.C.のユニフォームサプライヤーとしてサポートしている株式会社ワコール。京都サンガF.C.を通じて“ピンクリボン活動”などを推進している。その一方、今話題のサポートギア「CW-X」に対するこだわりも語っていただいた。
株式会社ワコール ウェルネス事業部 事業部長 松井恒夫
   

——最初に社会貢献に対する、御社の企業理念、基本的な考え方から教えていただけますか。

「私どもワコールは、今は亡き塚本幸一が1946年に創業。太平洋戦争から復員したその日から、婦人洋装装身具の卸商としてスタートしました。塚本はビルマ戦線で50人ほどの部隊に所属しておりましたが、結局生きて帰ってこれたのは3人だけ。それゆえ、自分は「生きているのではない」、「生かされているんだ」と思われたんですね。要するに、「自分が持って帰った命は自分のためにあるのではない」ということで、「世のため、人のために、自分の命は使わなきゃならないんだ」という信念でこのワコールという会社を創業したというわけです」


——それが企業理念の根幹ということですね。

「はい。そして、その塚本がある時、出光興産の出光佐三様の講演を聞かれて、すごく感銘されて帰って来たそうですが。そのときのお話に出てきた“相互信頼の経営”ということを、当時は社長だった塚本が掲げ、以来我が社の基本理念としてずっとしみ渡っています」


——なるほど。

「相互信頼というのは、当然最初は従業員と経営陣との関係から始まります。経営陣は従業員を信頼するから、従業員も経営陣を信頼してほしいということであり、それがさらに従業員からステークホルダーといわれる株主様であったり、地域住民の方であったり、広がっていく。そのことがですね、私どもの会社の経営理念となっています。まぁ、その相互信頼からいろいろな社会貢献ということもとやってきているわけなんです」


——スポーツ支援についてはいかがですか。

「スポーツ支援に入る前にですね、やはり、私どもは女性に一番身近に触れる商品を造っているわけですから、“女性共感企業”ということを訴えてまいりました。「女性と共に生きていくんだ」ということをずっと言い続けているわけですが、なかでも一番言いたいのは、「リマンマ」という事業なんです。リマンマの“リ”は再び、“マンマ”は乳房のこと。つまり、乳がんによって乳房手術をしなければならなくなった方に、美しいボディラインと笑顔を取り戻していただくためにブラジャーとパッドをセットにした商品を開発した。これが、我が社にとって一番大きな社会貢献だと思います。そのほか、東京の青山に「スパイラル」という複合文化施設を建てまして、社会貢献の一環として文化芸術の情報発信基地としているということもあります。あと、この本社の東側のビルの壁にピンクのリボンが見えたかと思いますが、この「ピンクリボン」活動ももう8年近くなりますか。この活動は、乳がんの早期発見、早期診断、早期治療を推進する活動です。がこのピンクリボン活動なんです。ワコールとしては、当然女性の乳房とは切っても切れない関係ですからね」


——では、スポーツは?

「“スパークエンジェルス”という女子陸上競技部を作ったことが、スポーツ分野における社会貢献のスタートです。ちょうど今年、20周年に当たりますが、北京オリンピックにも所属する福士加代子選手が1万メートルと5000メートルに出場しました。彼女たちを支えることによって、スポーツをすることの素晴らしさを広く社会に訴えかけられればと考えております」


——サッカーに関しては?

「亡くなった会長が京セラの稲盛(和夫)様と同じ京都出身ということで、非常に懇意にしておりまして。その稲盛様から京都にプロのサッカーチームを創りたいと相談を受けた会長が、快く引き受けて出資者の一人になったのが、京都サンガF.C.との関係のきっかけです」


——Jリーグ発足当初からということですね。

「そうです。うちから京都サンガF.C..に人を派遣したりという部分もありまして、非常に深い関係を持たせていただいています」


——サッカーという競技に対しては、どのようなイメージをお持ちですか。

「もうこれは本当に個人的な感想になるんですけれども」


——ぜひ、お願いします。

「実は、私は高校時代にサッカーをやっておりまして。そういう面では、サッカーというのは昔から慣れ親しんだスポーツですが、Jリーグがスタートしてからサッカー界は変わったなという印象を強く持っています。私たちが高校の頃にやっていたサッカーというのは、チームプレーにはなっていなかったんですよね。それぞれの個人的な能力で勝負してばかりいて。本当にサッカーがチームプレーに大きく変わったのは、やはりJリーグができてからかなと私は個人的に思っています。ラグビーなどは“For the team”という精神をずっと持ってきたと思いますが、サッカーの場合ももちろん一人では戦えないんですけれどもね、どちらかというと一人のスタープレーヤーを中心にチームができてきたというか。それが、それまでのあり方だったと思うんです。特にフォワードに優秀な選手がいれば、その選手にボールを集めてシュートできれば試合に勝てるよといった感じで。本当にチームプレーが重視されるようになって、ミッドフィルダーと呼ばれるポジションの存在が大きくクローズアップされてですね、それによって勝負が決まるようになってきた、そうした傾向に生まれ変わったというのは、やはりJリーグになってからじゃないかというのが私自身の感想です」


——サッカー全般についてはいかがですか?

「私たちが小さい頃というのは、サッカーなんてほとんど見向きもされないスポーツでした。やっぱり、男の子はまず野球でしたよね。でも、もう今の子供たちは、私の子供もそうなんですけれども、まずサッカーから入っていく。そういうところからしても、サッカーの裾野が広がったと思います。また、だからこそオリンピックやワールドカップなどで日本が活躍できるようになってきた。選手の層が厚くなって、そこから突出した選手が育ってきて、世界レベルで戦えるような選手が出てきたということを、私自身とても喜ばしいというか、非常にうれしい気持ちです。」


——京都サンガF.C.とずっとお付き合いされてきたなかで今までになさってきたこと、具体的に教えていただけますか。

「過去と言いますか、かつての取り組み方としては、出資者としての立場だったり、人材派遣だったりとかという部分が非常に強かったというのが事実です。一応援企業みたいな形で。それが、2年前からですか。3回目のJ2落ちのとき、ユニフォームを担当していたスポーツメーカーさんが撤退されまして。当時の稲盛会長様から「ワコールさんの方で、ユニフォームをやってもらえないか」というお話がありました。我々としては、スポーツブランド「CW-X」をやっていましたが、まだまだブランド認知という意味では大きく飛躍する前の段階でしたので、ユニフォームサプライヤーを通して大きなPRになるのではないかということで、ユニフォームの製作もお引き受けしたんですが・・・とにかく、非常にタイトなスケジュールでして。4カ月程しかなかったんですが、1月のキャンプインのタイミングで全て、ユニフォームだけでなく練習着からバッグなどまで全部を一から作りました。他のメーカーさんと違って、我々はシューズをやっていないんですけど。そういう意味では、非常に新しいというか、大きな取り組みではありました。他のメーカーさんからは、「絶対に無理だ」なんて言われたんですけれども」


——奇跡的でしたね。

「スポーツメーカー様はどこもシューズからスタートして、ウエアというのはどちらかというと付随品みたいなものですが、我々の場合はウエアというか、インナーからですからね。スポーツウエアのなかでもそれを主として作っていましたので、表に出るものというのは実はなかなか作っていなかったんですよね。そういう部分で、京都サンガF.C.様に外のユニフォームを着ていただくということは私たちにとってはアピールの場にもなりました」


——もともと、「CW-X」のインナーは提供されていたんですよね。

「はい。選手からもいい声といいますか、好評をいただいてました。我々の作っているCW-Xサポートタイツというのは疲れにくいという機能を持っていまして。ちょっと圧をかけて体を守ったりとか疲れにくくしたりするようなインナーを作っておりますので、それ自体はもう何年も京都サンガF.C.の選手のみなさんに使っていただいています」


——今回の北京オリンピックで、ユニフォームの下に着るインナーの話題が結構出てきましたが、御社ではかなり前からからやっているわけですね。

「そうですね。ワコールには人間科学研究所というところがありまして、人間の筋肉そのものだったり、体の動きを分析できる装置を持っていますので。そこからのデータに基づいて、皮膚なり筋肉の一部としてのアンダーをスタートさせたということが他社との大きな違いです。つまり、筋肉の動きをサポートするような商品をずっと作ってきて、そこから少しずつアウターの世界へ広がってきたというわけです」


——そうした商品を作られるようになったきっかけは?

「商品自体はもう15年前からやっておりまして。もともとはですね、研究員の妹さんがスキーに行って靭帯を伸ばしてしまったんですが、テーピングをピピっとしたらヒザが痛くなくそのまま滑れたという話を、そのお姉さんが聞いたのがきっかけなんです。今の研究にテーピングの機能を加えたらたらおもしろいかもと。そこで、タイツにテーピングの生地をちょっと混ぜれば疲れにくくなるのではないかというので開発されたのが、15年前に我々が作った「CW-X」というブランドの原点になっていますね」


——かなり前から取り組まれているんですね。

「スポーツブランド自体は15年前からやっているんですが。それがですね、7年前にイチロー選手(シアトルマリナーズ)がケガをされまして。メジャーに行かれる前の年でした。イチロー選手が私どものタイツを選んで、メジャーに行くときも「CW-X」のサポートタイツを持って行くと決められそうなんです。それ以来、イチロー選手にはご愛用いただいておりますが、最初は私たちも知らなかったんですよ。イチロー選手がワコールの商品を着けてくれているということを」


——全く個人的に選ばれたということですか。

「そうなんです。イチロー選手はたぶん誰かに勧められて、どこかで買われたんだと思うんですけれども。たまたまうちの社員がテレビでイチロー選手の練習か何かを見ていたら、「あれ、うちの製品だ」とわかりまして。慌ててコンタクトを取らせていただいて、「商品を提供させていただけませんか」と。「できれば、それに商品に対するアドバイスをいただきたい」ということで、イチロー選手との契約がスタートしたということになるんですが。」


——理想的な関係ですね。

「そうですよね。ただ悲しいかな、当然、試合とかで見られる外側のユニフォームは全部他社の製品でして。ワコールの製品を着けていただいているかどうかというのは、一般の人はなかなか見る機会がないということが、ちょっと残念なところなんですけれども」


——でも、一番大事なところで体を支えているんですね。

「はい。多くのアスリートを、例えばケガ防止であったりという部分で支えているのが私たちの商品だというような自負は持っていますね」


——実際に身につけている選手たちからの評判は?

「お蔭様で非常に高いですね。特に、タイツ系の商品が。今では京都サンガF.C.だけでなく、他のチームのトレーナーさんからも多くの問い合わせをいただいています。京都サンガF.C.がJ1に上がった途端、急に問い合わせが増えまして。どの試合でも、ちょっと見せて見せてって感じです。ここまでインナーが支持をされているということに、京都サンガF.C.もすごくビックリされているようです。今期移籍されたある選手などは、「京都サンガF.C.に来て一番いいことは、このタイツがはけることです」なんて言ってくれました。外国人選手のなかにはインナーを着ない選手もいますが、今の京都サンガF.C.の選手たちはインナーは絶対に着てますね。みなさんすごく体について考えていて。昔のJリーガーに比べてみても、今の選手たちってすごく真面目なんですよ。ケガをしたくない、ケガせずにプレーしたいという思いが非常に強いようです」


——アウターについては?

「秋田(豊)コーチからも「本当に、コレを一から作ったんすか?」って、アウターにも評価をいただいています。先日、新入社員を練習場に連れて行って、秋田コーチに「一言いただけませんか」とお願いしたら、「僕もコーチ1年目なのであまり言えないんですけどね」と言いながらも、「ワコールは本当にいいものを作ってくれているので感謝しています」と、本当に普通の声で、スポンサーだからというわけじゃなく、言っていただきました。いろいろなウエアを今まで提供してきましたが、京都サンガF.C.の選手、コーチのみなさんには、「CW-Xと付き合ってから、本当に調子がいい」と感じていただいているようです」


——Jリーガーのプロ意識というのも、スタート地点と比べて変わってきているというか、成長しているんでしょうね。

「入れ替えが激しいですからね。非常にシビアな社会。この前までちょっといた選手が本当にいなくなる業界ですから」


——スポーツを支援されるようになって、特に京都サンガF.C.の支援ということですが、企業として得たことは?

「私たちの事業部ということでいうと京都サンガF.C.様に対しての意識がすごく変わってきました。特に、ユニフォームを提供してからというのは。もともと、株式会社ワコールと京都サンガF.C.というのは、資本関係だったりとかいう部分の意識はあったと思いますが、「私たちのユニフォームを着て戦ってくれているんだ」ということで、私たちと同じ土俵で戦ってくれているんだという意識が、非常に高まってきましたね。京都サンガF.C.の試合を気にする人が増えたと思います」


——研究熱も上がったりして?

「そうだと思いますが」


——対外的なところではいかがですか?

「問い合わせ等は確かに増えています。私たちの仕事の範囲そのものがですね、従来は先ほども言いましたように、インナーしかもボトムが中心の仕事をメインにしていたんですが、そこからトップスの方に広がってきたりとか。さらに、そのトップスからよりアウターに近いようなところへ広がってきたということで、ユニフォームの依頼と相乗効果が結果的にはあったんじゃないのかなとは思います」


——地域的には?

「京都市内に限れば、子供たちがいっぱい着けてくれています。企業というのは、どうして地域とのコミュニケーションというものがなかなか取りにくいと思うんですよ。たぶん、どこの企業もそうだと思うんですけれども。それが京都市内に限って言えば、非常に身近にワコールを感じていただけるようになっていますす。同時に、全国レベルでスポーツショップに営業に行くメンバーにしても、「サッカーのユニフォームを作っているんですよね」っていう話があると、取引先はもちろん、そこのトップの方と商談するときも本当に話題にしやすくなっているようです」


——京都サンガF.C.とのこれからの取り組みは? または現在、取り組んでいることがございましたら。

「ユニフォームサプライヤーとして、選手・スタッフへのユニフォームの提供だけでなく、可能な限り、CW-Xのコア商品群であるサポートギアを選手に提供し、選手のコンディショニング維持に努めていきたいと思っています。サッカー業界におけるCW-Xのブランド認知はまだまだですが、各選手のコンディションを整えるインナーとしての認知を向上させたいですね」


——近々、京都サンガF.C.と一緒に行われるイベントがありましたら。

「9月21日(日)に開催される企業協賛DAYでは、ワコールのCSR活動として「ピンクリボン活動」をメインに打ち出し、女性共感企業として乳がんの早期発見啓発活動をいたします。家族やカップルで来場されるお客様へ、より身近に「ピンクリボン活動」を知っていただくため、選手にもご協力をいただきながら、その活動を推進していきます。」


——最後に、サッカー界に望まれることや提言、あるいは選手やサポーターの方々への熱き応援メッセージなどお願いします。

「北京オリンピックが終わり、次はいよいよワールドカップ最終予選。国を代表して、そうした場面に行っている選手たちには、誇りを持って臨んでほしいですね。それで結果的に、もしまずかったとしてもそれは仕方ないじゃないかと思うんです。また、周りで支える人たちも、選手たちにどういったことをしてあげればいいのか、キッチリ理解した上で臨んでほしいなと。それは業界であったり、そのほかいろいろとサポートをする人はいるでしょうが、本当にサッカーにとって何が一番いいのかをよく考えた上で、選手たちを元気よく送り出してほしいというのが、私がサッカー界に望むことですね。選手たちが最高のパフォーマンスを出せるよう、真に国の代表としての誇りを持って試合に臨めるよう、単にいい宿舎に泊まらせるとかではなく、何をサポートしたらいいのかということを、みんなで真剣に考えていきましょう」


取材・構成:宮崎俊哉(CREW) 撮影:水野浩志

 

松井恒夫(まついつねお)
1983年同志社大学卒業後、株式会社ワコールへ入社。インナーウェアのブラジャー課に配属される。同商品の生産管理、材料調達等を担当し、販売事業所である福岡店勤務となる。本社と販売店の商品のパイプ役を経験した後、専門店担当のセールスマンに。その後、労組の専従を経て中央執行委員長を経験。国際事業本部にアジア担当課長として所属の後、生産基地であるベトナムワコール社長を経験。本社に戻り生産・材料を統括する部長を担当後、本年4月より現職に就く。

株式会社ワコール
“ボディデザイニングビジネス”を自らの事業領域と定め、インティメートアパレル事業・ウエルネス事業を通して「美」「快適」「健康」という三つの価値を提供。その中枢として、女性のからだの基礎研究をする「人間科学研究所」をもつ。2009年11月に創立60周年を迎える、国内最大手の下着メーカー。
設立:1949年11月(創業:1946年6月)
所在地:京都府京都市南区吉祥院中島町29
URL:http://www.wacoal.jp/
 
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この取材は2008年8月に行われました