――最初に、御社がスポーツを支援されていく上での基本的な考え方を教えていただけますか?
「当社はオンライン専業で証券やFXといった、いわゆる金融商品の取引を扱っております。もともとは、既存のネット証券とかネット銀行などの開発をやっていたエンジニアを中心として創った会社でして、同業他社さんのように金融機関がネットを始めたというのとは違って、エンジニア、IT関係の人間が金融サービスを始めたという感じです」
――その点が御社の大きな特徴ですね。
「はい。そんなわけで、やりたいことというのは、今まで開発してきて“もっとこうすればよかったんじゃないか”、あるいは“もっとこうすればお客様に喜んでいただけるんじゃないか”とか、要するに、もっと安くて良いサービスを提供するにはどうしたらいいかという考えがありまして、それを実現しようと設立した会社です。最初は『GMOインターネット』という会社の子会社として、2005年10月『GMOインターネット証券』を立ち上げ、実質的には2006年5月からスタートしました」
――当時、既にネットでの株の取引というのは…
「もう当たり前の時代になってきていましたので、社会のインフラのようなものだという位置づけで、どなたでも利用でき、しかもできるだけ安く、使い勝手のいいものを提供しようというコンセプトで始めました。“最”後発でしたけど、いろいろなアイデアを出しながらなんとか1年ちょっとくらいで軌道に乗りまして」
――凄いですね。
「本当にみなさまのおかげです。取り扱っている商品自体、金融商品というのはどこも一緒ですので、やはり価格を安くして、使い勝手をよくするという部分でしか特色を出せない。そこに注力してやってきたのがうまくいったと思うんですけど。そうしてようやく事業としてうまくいき始めたとき、例のサブプライムローン問題があり、世界経済、日本経済もかなりダメージを受けまして」
――日本全体が沈滞ムードに入ってしまいましたからね。
「経済状況は暗くなってしまいましたが、当社は口座数も順調に増えており、頑張っている会社もあるんだというアピールというか、何か日本全体をもっと明るく元気にしていきたいという思いがありまして、いくつか広告を出すようになったんです」
――そこでスポーツを支援されるようになった?
「そうなんです。スポーツというのは、老若男女を問わず、やっている人はもちろんですが、観ている人を明るく元気にするような、一体感やライブ感というものがありますから。そういったところのスポンサーになれば、当社の若々しさや元気の良さをアピールできますし、世の中を元気づけるようなことが少しでもできるのではなかろうかと。最初はボクシング、それからフィギアスケート、ゴルフ、バレーボール…いくつかお話をいただき、大会の協賛、バレーボールでは全日本男女代表チームのユニフォームの胸にロゴを入れさせていただいております」
――いろいろなスポーツを支援されているんですね。
「そうしたなかで、今回たまたま湘南ベルマーレさんのお話を伺いまして。私個人は結構サッカーが好きで、よく試合も観たりするんですが、会社としてはどうしようかと。Jリーグというのは、基本コンセプトとして地域を活性化するとか、地域密着型をとっていますので、私どものようなネットで日本全国にサービスを提供する会社が、そういった地域密着型のなかで特定のチームをサポートするというのは果たしてどうかと思ったんです」
――なるほど。
「ところが、ベルマーレさんのお話を伺うと、Jリーグで初めてNPO法人として親会社を持たずにやってこられていると。ちょうど当社と同じだったんです」
――と、言うのは?
「親会社から独立して『クリック証券』と名前を変えた頃の当社も、様々なハードルがありましたが、自分たちで考えて行動し、多くの方々のご支援をいただいて今日まで伸びてきました」
――そういったところが何となく似ているなと。
「ええ。私どもは、社会的インフラに近いビジネスとして、ご自分で考え、行動するお客様の活動をサポートするのが役割です。同じように、受身になるんじゃなくて、地域住民の方々とも支えあって、それぞれができることをやっていこうとされているベルマーレさんに共感しましたし、元気にしたいとか、明るくしたいという思いはそういう方々を応援することで実現できるという気持ちもありました」
――よくわかりました。
「あと何より、選手や監督、コーチ、スタッフ、チームの方々が一丸となってがんばって、J2で優勝争いをされていますよね。私どもも、株式の取引量では、ネット証券のいわゆる大手5社のちょうど下、6位にいて、FXに関してはそれらを抜いてFX業界2位と非常に業績が伸びてきていますが、それでもまだ大手5社に匹敵するような会社として認識されるには至っていないんです」
――J2だと。
「まさに、J2のトップくらいまでにはなってきているんですが、まだJ1としては認めてもらえてないというところもあって。ベルマーレさんが優勝したり、J1に上がったりということになれば、もちろん宣伝効果も大きいですけど、どこかポジショニングとしても似ているということで、今年7月からおつきあいが始まった次第です」
――サッカーがお好きだというお話でしたが、サッカーという競技、あるいは日本のサッカーに対してどのようなイメージをお持ちですか。
「個人的なイメージなんですけど、やはり美しいなと」
――“美しい”と仰った方は初めてです。
「あ、そうですか。スポーツのなかでサッカーが一番好きかもしれないです。やるのは駄目なんですけど…」
――おやりになっていたんですか?
「いいえ、遊び程度で。とにかく、凄いじゃないですか、あのパスとかドリブルとかシュートとか。見えないところからパスを通したりして、どういう空間認識をしているんだろうと思いますよね。ディフェンスにしても、ファールしないでボールを奪う技術って凄いですし、そこから攻撃に移るスピードやダイナミックな展開とか、観ていて感動します」
――確かに、美しいですね。
――地域密着のお話がありましたが、Jリーグの理念、構想に関してはいかがですか?
「そうですね、百年構想とか素晴らしい考え方だなと思っています。それぞれのクラブがサッカーだけではなくて、いろいろなスポーツ、あるいはスポーツを通した健康作りとかも目指されていたりして。ちょうど今、地方分権の時代という話になっていますが、スポーツを通して活性化したらいいなと、個人的には思いますね」
――今後何か、サッカー関係で予定されていることは?
「今のところ正直まだノーアイデアです。そうですね…ファンあってのサッカーであり、Jリーグ、チームですから、当社とある意味似ているのかもしれないので、その辺も勉強させていただけたらなと思っています」
――具体的には?
「当社の場合、メーカーのように商品開発をして独自のモノを作って売るのではなく、電話会社のように、使いやすく便利な環境を提供するのが仕事です。そういう意味では、お客様がファンになってくれるかというところで勝負していますので、その点で」
――サポーターを育てているような…
「ある意味近いのかもしれないですね」
――最後に、サッカーへの想いを語っていただきたいのですが。サッカー界、選手、サポーター、どこへ向けてもかまいません。もちろん、ベルマーレに対してでも。熱きメッセージをお願いします。
「今がちょうど気候的にも一番キツイ時期だと伺っていますので、選手のみなさんにはそこを乗り越えてがんばっていただきたいですね。どうしても選手層が薄いチームにとっては、この夏場は大変でしょうけど。そして、ベルマーレさんに関しては、J1昇格と言わず、ぜひJ2で優勝していただきたいと思います。それを支えるスタッフの方々や地域住民の方々にも、自分たちがクラブを支えているという誇りを持って、盛り上げていっていただけたらと思います。また、日本のサッカー界には、ぜひともワールドカップで結果を残して欲しい。なんかサッカーのことだと、いくらでも話が尽きないんですが。とにかく、観ている人が感動するようなシーンをドンドン増やしていただきたいと思います」
取材・文:宮崎俊哉(CREW) |