——サッカーを支援されるようになったきっかけからお話しいただけますか。
「私たちは証券会社ですので、法人部門で様々な企業と関係があります。プロチームを持っている会社とのお付き合いの中で、スポンサーなどのお手伝いをさせていただいているチームが何チームかあります」
——現在サポートされているJリーグのチームは?
「京都サンガF.C.ヴィッセル神戸、横浜F・マリノス、鹿島アントラーズの4チームとお付き合いをさせていただいております」
——Jリーグのチームサポート以外では?
「2002年ワールドカップの日本誘致のときにも、企業としてお手伝いさせていただきました」
——日本代表のサポーティングカンパニーとなった経緯は?
「私たち証券会社は、証券市場を通じて、企業と投資家を結ぶ橋渡し的な役割がありますが、感覚的にはどちらかというと投資家サイド、スポーツでいえば、サポーターサイドにいると強く感じています。これは投資家のみなさんと一緒に、経済を盛り立てていくんだ、社会を盛り立てていくんだ、という感覚、すなわちサッカーや野球などのスポーツチームを応援する応援団のようなイメージが強くあると思うんです。“ワールドカップに向けてがんばっているサッカー日本代表を応援していただけないか”というお話を頂戴した時、今、貯蓄から投資の時代に大きく舵を切りはじめたこの時期の私たちの考え、スタンスとピッタリイメージが重なるに違いないということで、サポーティングカンパニーの1社としてやらせていただくことになりました」
——それが昨年、2007年ですね。
「はい。もともと2002年ワールドカップ日本招致の時にお手伝いさせていただいて、サッカー日本代表に対しては非常に親近感があったこともあり、思い切ってオファーを受けさせていただきました」
——サッカーへの支援を通じて何を期待されますか?
「もちろん私たちも企業ですから、広告的な意味合いは重要だと思っています。ただ、広告効果のみで考えるのも難しいですよね。チームが勝てばいいのですが、負けてしまうと…色々なことを言われてしまいますし(笑)。サポーティングカンパニーとなったからには、サポーターと一緒に勝ったら喜びを分かち合い、負けても次に向けて応援していく。長い目でのサポートが必要です。サッカーは団体競技で、しかもプレーヤーの人数も、応援している人たちもとても多い。マーケットに関わる我々のビジネス機能と似ていますね」
——それが、サッカーを選ばれた理由ですね。
「社内にサッカー好きな人が山ほどいるかどうかはわかりませんが(笑)。中には、“何で、証券会社がサッカーの日本代表を応援するの?”という社員もいると思います。それでは何故サポートをするのかといえば、サッカー日本代表のサポーター、いわば日本全体で応援しているということに意味を感じるからです。先ほども言いましたが、日本経済を応援する我々の立場と共通するものがあると肌で感じています」
——サッカーを支援されるようになって、企業として得たことは?
「サッカーを応援する情熱に関わるのは非常によいことではないでしょうか。我々の中期経営計画のスローガンにも使われている“Passion”(情熱)は、会社の中にも浸透しています。当社には2ヵ月に1回、社員だけでなくOBやOGにも配布している発行部数20,000部の『不二』という社内報がありますが、そこでサッカーのサポート活動を取り上げるとかなりの反響があります。サッカー日本代表を支援していることが社内に着実に浸透し、定着しつつあることを感じます。一方で、営業員は、お客さまから『昨日の試合を観ていたら大和さんの看板が出ていたけど、あれどうしたの?』と言われることが多くなったようですね。お客さまにも、我々がサッカー日本代表を応援していることをもっと知ってもらいたいですね」
——スゴい媒体をお持ちですね。
「子どもたちが旗を持ってピッチに入るフラッグベアラーの権利を、サポーティングカンパニーとしていただくことがあるのですが、『不二』を通じて社内で公募すると申し込みがすごいですよ。子供たちにとっても素晴らしい経験になると思い、次回はお客さままで広げて公募していこうと考えています」
——認知度も上がっている?
「日本代表は、高校生、大学生など若い世代は特に真剣に応援している人が多いですからね。我々の会社は、人材が全て、と言っても過言でないので、優秀な学生を採用する尺度にもなる、企業の就職人気ランキングというものを非常に重視しています。このランキングは、企業の認知度により影響を受ける部分も多分にあります。例えば、有益なイベントをやっている、セミナーをやっていることなどもそのひとつです。サッカー日本代表を応援するようになって、どの程度がサッカーの影響なのかはわかりませんが、新聞、経済誌などのランキングでも確実に上がってきています。社員や家族、経営陣も大変喜んでいます。副次的なものだとは思いますが、非常に良かったなと思っています」
——現在、南アフリカW杯の予選中ですね。
「ワールドカップ2次予選で苦戦しているときは、多少心配でしたが、そんなときこそ応援しなければなりません。
経済環境が悪くなったので、こんな時証券会社は商売にならないとか、新商品を出したって売れませんよ、なんてことは考えもしませんよね。厳しい時こそ、“一致団結してやりましょう”という気持ちで日本経済を一生懸命応援する。日本代表を応援する。苦しいときこそ、応援するのがサポーターですから。そういう感覚で一緒にやっていきたいなと思っています」
——その他、何かサッカーに関してなさってきたことは?
「当社はイメージキャラクターに“エビちゃん”こと蛯原友里さんを起用しています。日本代表のサポーティングカンパニーをさせていただくことになり、グループ広告などではサッカー日本代表ユニフォームを着てもらったりしています。先ほどから申し上げている“日本企業を応援するのと、サッカーの日本代表チームを応援するのは同じ”という意図です。イメージが重ねやすくて、すごくわかりやすい。エビちゃんが、サムライブルーのユニフォームを着るとカワイイですよ」
——今後の予定、お考えになっている取り組みなどがありましたら。
「ここからさらに手を広げていくという考えはありません。日本国民がサッカーに関して一番期待しているのは、やはりA代表のワールドカップ出場は重要でしょう。A代表がそこに向けてがんばれるようにサポーティングカンパニーとして精一杯応援していくことが使命だと感じています。私も、これまでサッカーをあまり観なかった友人や同僚を会場に連れ出し、一緒に試合を観るようにしています。ほぼ毎試合応援に行っています(笑)」
——実際にスタジアムに足を運ばれて感じたことはありますか。
「技術や勝ち負けだけではない、観る人が感動するプレーをして欲しいと思います。例えば、1998年フランスワールドカップのとき、結局一試合も勝てずに敗退しましたが、ジャマイカ戦で足を折りながらも必死に1点を取った中山雅史選手のプレーなどは心に残っています。選手のみなさんには、心に熱いものを持ってプレーして欲しいです。ともすればクールさを追求しがちな時代ですけれど。今の日本代表でも、ベテラン選手ほどきつい時に、きつい所に顔を出すじゃないですか。そういうことを、若手にどんどんやって欲しい。前半で潰れたっていいじゃないですか。必死さ、がむしゃらさがないと、見ている側には感動は与えらないと思います。オシム前日本代表監督の言っていた『走らないサッカーで勝てるわけがない』、大好きな言葉ですね」
——語り継がれるようなシーンを期待したいですね。
「その通りです。感動は、本当に全力で、死に物狂いでやった結果からしか生まれないのではないでしょうか。A代表はこれから先、アジア最終予選を勝ち抜かねばなりませんが、どの予選でも楽な予選などひとつもないでしょう。いつも熱心な応援をしてくださるサポーターのみなさんは本当に温かい。その気持ちをずっと持ち続け、ぜひ一つになって日本代表を支えていきましょう。
そして、選手のみなさんには、サポーターの熱き応援に応えるプレーをお願いします。手を抜いている選手など一人もいないでしょうが、厳しい戦いを勝ち抜くために、死に物狂いになるというのは絶対に必要です。とにかく、走って走って走って走って。見ている人が心を奮わされるようなプレーを期待しています」
取材・構成:宮崎俊哉(CREW) 撮影:新関雅士 |