——最初に株式会社平和の歴史、事業内容からお話しいただけますか。
「当社はパチンコ、パチスロメーカーです。パチンコ、パチスロは、庶民のささやかな娯楽としてスタートし、今や日本を代表するアミューズメント産業の一つに数えられる産業にまで発展しました。戦後の復興期である1949(昭和24)年の創業以来、パチンコ産業のリーディングカンパニーとして常に業界を牽引し、技術面・サービス面の様々な工夫や独自の技術革新に努め、新鮮で魅力的な娯楽として“パチンコ”を提供し、業界の健全化と発展のために貢献しています。
そのように身近な娯楽として、今では“大衆娯楽の王様”と呼ばれるまでに成長したパチンコですが、戦時中は不要不急の産業として製造を禁止された時期もありました。しかし、当社は“いかにしてパチンコパーラーのニーズを満たし、またファンにも満足していただける商品を提供するか”というメーカーの基本に立ち、現在は販売網を全国に拡大しています。
終戦直後、まだ学生だった創業者・中島健吉(現・ファウンダー名誉会長)は、戦死した学友、空襲で亡くなった下宿先の母子、そのほか戦争によって亡くなり、傷ついた多くの人々を目の当たりにして、“将来、戦争には関係のない仕事をしよう”との誓いを立てました。そして、終戦直後の貧しさの中でさえも屋台のパチンコ屋で玉をはじく人々の笑顔を見た中島は、“パチンコこそ平和そのものであり、平和の象徴である”と気付き、パチンコ店を始め、屋号を“平和”と名付けました」
——企業理念を教えてください。
「基本理念は“信頼と協調”、“顧客本位”、“研究開発”、“社会貢献”の4つからなっています」
——Jリーグを支援するようになったきっかけは。
「基本理念の一つである“社会貢献”として、長年スポーツ・文化活動への協賛など、地域への支援活動に取り組み続けてきましたが、2005年度よりJリーグのオフィシャルスポンサーとして新規参入しています。
Jリーグはスタートしてから、確か今年で13年目だったかと思うのですが、“日本における豊かなスポーツ文化の振興”を目指す理念のもと、Jリーグ及び各クラブの地域での地道な活動が日本全国で支持されています。私どもは、これまで全国のパチンコパーラーを販売先としていることから、全国的な活動、イベントに協賛することを一つのコンセプトとしてきましたが、Jリーグは“地域密着”を基本理念としながらもそれを全国レベルで展開しています。Jリーグの理念と活動は日本の豊かな娯楽文化の振興と、地域への還元を目指す私ども平和の考え方と共通であり、Jリーグに協賛することは意義深いことであると共感したというわけです。
今年度、Jリーグ・オフィシャルスポンサーとして、初めてパチンコ・パチスロ製造及び販売カテゴリーへの門戸が開かれたことは、当社としては願ってもないチャンスと考えています」
——Jリーグを協賛するようになって、企業が得たことは。
「オフィシャルスポンサーとなったことをきっかけに、当社でも多くの社員がスタジアムに足を運ぶようになりましたが、Jリーグがこれまで続けてきた地域に密着した活動がここまで全国に浸透しているとは正直思っていませんでした。
パチンコはギャンブルではなく、アミューズメント、エンターティメントであるとのイメージチェンジ、イメージアップにも努めていますが、その点でもJリーグのオフィシャルスポンサーとなったことが大いに役立っていると思います。
また、当社の販売網は全国に31拠点あり、それぞれが各拠点において地域に密着した販売方法をとっていますが、Jリーグが“平和”であるとすれば、各クラブがパチンコホールとなり、サポーターがパチンコユーザー。Jリーグの成功を遂げた活動から、パチンコユーザーに対していかに楽しんでいただけるかというヒントが得られるのではないかと期待しています」
——これまでJリーグに対してされてきたことは。
「Jリーグ・オフィシャルスポンサーとして、Jリーグとともに人々に夢を与え、地域に貢献できるパートナーとしてさまざまな活動に参加できればと考えてますが、残念ながら今年度は初年度ということもあり、手さぐりな状態でほとんど当社が臨む活動ができていません。
ただ、そのような状況で唯一開催できたのが、『HEIWA×Jリーグ キッズキャラバン in 桐生』です。8月14日、本社のある群馬県桐生市でJリーグにご協力いただき、トッププレイヤーとの触れ合いによりサッカーの楽しさや芝生の上でスポーツを行うことの素晴らしさを子供たちに伝えようとしたわけです。選手育成の枠にとどまらず、桐生市サッカー協会の協力もいただき、さまざまなプログラムが実施できたと思います。Jリーグが唱える“地域社会との協調”が地方の地域サッカー協会にも浸透していることがわかるとともに、関係者、保護者の方々、参加した子供たちが実に協力的で、サッカーを通じての社会貢献がこれほどまでに効果があるのかと実感しました」
——Jリーグ関連で、今後予定されていることは。
「今後の活動についてはまだ具体的には決まっていませんが、キッズキャラバンを桐生市以外でも開催していきたいと考えています。
Jリーグ公式HPによれば観客動員数は741万人。パチンコ参加人口は1790万人(『レジャー白書2005』社団法人社会経済産業省本部) 。Jリーグの観客動員数の2.4倍です。当社がJリーグに協賛させていただくことによって、パチンコユーザーがJリーグの試合会場に足を運ぶようになり、また逆にJリーグのサポーターがパチンコに興味・関心を持っていただけれるようになればいいですね」
——Jリーグに望むことは。
「ファンが安心して観戦できる環境を保っていただきたい。私も今年初めてJリーグの試合を観戦しましたが、何よりもサポーターの素晴しさに感動しました。熱狂的な応援に心打たれ、私自身、そして家族もサポーターとなりました。しかし、一部の心ないサポーターの件もあり、多少怖いイメージがあるのも事実。小さな子どもたちも含め家族みんなで楽しめる環境を大切に、もっとファンを楽しませてもらえればと強く願います。試合前、家族そろってピクニック気分でお弁当広げてなんて様子を見ると、本当にいいですよね。
パチンコ・パチスロ業界というのは、平和な世の中であるからこそ成り立つ産業です。スポーツもまた、同じく平和であるからこそできるものだと思います。スポーツ観戦が楽しめて、パチンコも楽しめる。そんな平和な世の中であり続けられるよう、Jリーグとパートナーシップを組みながら努力していければと考えています」
取材・文/宮崎俊哉(CREW) 撮影/新関雅士 |