――まず初めに、御社の企業理念から教えてください。
「“世界中のできるだけ多くの人々に、食を通じて健康をお届けする”、それがダノンの企業理念であり、私どものミッションです」
――社会貢献についてはどのようにお考えですか?
「食と健康が大きなテーマとなっておりますので、それをもとに世界各国で社会貢献活動、あるいはソーシャルビジネスと呼ばれている活動を行っています。代表的なものとしましては、ノーベル平和賞受賞者でグラミン銀行代表を務めるムハマド・ユヌス氏と協力して、バングラディッシュで“グラミン・ダノン・フーズ”という栄養価の高いヨーグルトを現地の人々にお届けしています。こうした活動は、バングラディッシュの方たちの雇用促進にもなりますし、継続的なビジネスを支援することにもなっております」
――スポーツ支援に関してはいかがでしょうか?
「社会貢献活動の一環として、今回の『ダノンネーションズカップ』というひとつのプラットホームを10年前に立ち上げました。スポーツを通じてといいますか、子どもたちが体を動かすことが健康に繋がれば、食と健康というテーマに結びつくと考えたわけです」
――『ダノンネーションズカップ』のほかには?
「社会貢献というわけではありませんが、プロゴルフの女子トーナメントとして、『エビアンマスターズ』を毎年開催しています。昨年、宮里藍選手が優勝された大会です。それと、社内の活動ですが、『ダノンワールドカップ』と呼んでいる大会を2年に1度開催しております。ダノン各国のスタッフが社内チームを作り、それぞれの国で優勝したチームが集まって世界大会を行い、チャンピオンを決めるという大会です。男子、女子、ミックスという3種類のトーナメントがあり、男子と女子は6人制、ミックスは3人制。1998年に始まり、2010年大会は55カ国、1万1693人が参加。日本の国内予選にもダノンジャパン、ダノンウォーターズオブジャパン合計で男子8チーム、女子3チーム、ミックス2チームが出場しました」
――盛り上がっていますね。サッカーという競技に対しては、どのようなイメージをお持ちですか?
「会社として、サッカーはあらゆるスポーツのなかで万国共通に行われいるスポーツであると考えております。ボールと場所さえあれば、誰でも、どこでもできるスポーツというのが大きな魅力であると思います」
――『ダノンネーションズカップ』を開催されたきっかけは?
「ダノングループ最高経営責任者であるフランク・リブーが、世界中の子どもたちが気軽に参加できるスポーツは何か、スポーツを通じて食と健康というテーマを結びつけられるものは何かと追求したとき、サッカーに辿りついたというわけです。最初はできる範囲でやろうということで、8カ国のチームを集めて、2000年にスタートしました。それが当初の想像以上に拡大し、今では40カ国の子どもたちが参加できる大会に育ちましたが、社長自身もこれだけ大規模になるとは考えていかなったようで、非常に喜んでおります」
――子どもの大会にされたのは?
「ダノンは、あらゆる年齢層の方々に召しあがっていただける商品を揃えております。例えば日本ですと、離乳食であるベビーダノンから始まり、プチダノン、さらに年齢を重ねてダノン、あるいはBIOというように全ての年齢層の方々に楽しんでいただいていますが、なかでも、体がつくられる幼少期というのは、非常に栄養というものが大切です。きちんとした食事を通じて栄養を摂り、健全な体をつくっていかなければなりません。大会を開催するにあたり、そういう点に着目しました」
――『ダノンネーションズカップ』への反響はいかがでしょうか?
「日本では今まで大規模な大会ではなかったので、今ひとつ認知度は高くなかったと思いますが、実際に参加してくださったJリーグのチーム関係者からは、“ダノンカップは、子どもたちが目指している大会である”とおっしゃっていただいております。今年は私も開催地であります南アフリカ・ヨハネスブルグへ同行させていただきましたが、2009年チーム、2010年チームそれぞれの監督さんに伺うと、“子どもたちにとって重要な大会であり、世界の場でいろいろな経験ができる大会である”と言っていただきました。そういった意味からも、今後ますます拡げていく価値はあると認識しております」
――社内的な反響は?
「社員全員、すばらしいことをやっていると感じているようです。実はつい2週間ほど前にも、日本大会アンバサダーの北澤豪さんにもご参加いただいて、『ダノンネーションズカップ』を盛り上げようと社内イベントを開きました。2011年からは日本大会もかなり大きな規模になるものですから社内ボランティアも必要になり、それを募る目的もありましたが、既に何人かのスタッフが手をあげてくれています」
――社内のサッカー熱を感じますね。
「先ほどもお話しさせていただきましたように、日本でも『ダノンワールドカップ』に参加している社員も多いので、サッカーに対する熱意といいますか、関心は非常に高いと思います」
――2011年大会の先に計画されていることなどありましたら、お聞かせください。
「2011年、まずは大会を成功裡に終わらせたいということです。2011年の日本大会が成功すれば、2012年の世界大会を日本で開催できたらと、社長をはじめ会社をあげて強く希望しており、それも夢ではないと思っています。
来年は東京・愛知・大阪という形で3地域で予選大会を行いますので、できる限り拡大して、なるべく多くのお子さんたちに参加するチャンスが拡がればいいですね」
――世界大会の開催地はどのようにして決定するのですか?
「2008年大会までは、フランス各地で行われていましたが、2009年からはフランス以外ということになり、まずはブラジルに決まりました。ご存知のように、ブラジルと言えばサッカーの“聖地”のようなところですから。残念ながら、新型インフルエンザの影響で中止となりましたが、2010年は南アフリカのヨハネスブルグ。大人のワールドカップが実際に行われた場所でやることによって、子どもたちに“自分たちもがんばれば、何年か後にはこういう場所でプレーできるんだ”という夢を与えることができると考えました。来年2011年の世界大会はスペインのマドリードで開催されますが、こちらもサッカーが非常に盛んなところ。そういったところが世界大会の開催地に選ばれていますので、2002年ワールドカップを開催した日本も有力な候補地だと思います」
――楽しみですね。
「スペインに渡ってCEサバテルに入団した指宿洋史選手(2002年大会・日本選抜)や浦和レッズの原口元気選手(2003年大会・日本選抜)をはじめ大勢の選手が『ダノンネーションズカップ』を経験して、今プロ選手として活躍されていますが、この大会に出場した子どもたちが彼らに続くような選手になってくれることを期待しています」
――サッカー界に望まれること、提言などございましたら。
「日本代表チームが目覚しい活躍をしてくれることが、『ダノンネーションズカップ』の追い風になると思います。トップ選手たちが世界の場で活躍してくれれば、子どもたちにも“自分たちもあんなふうになりたいな”という夢が芽生えてくると思います。そうなれば、サッカー界全体の相乗効果も高まるのではないでしょうか。そしてできれば、プロ選手のみなさんにも子どもたちが活躍しているところを観ていただいて、“子どもたちもがんばっているんだから、自分たちもがんばろう”というふうになったら、私どもとしては非常にうれしいですね。今回2009年大会も2010年大会も川崎フロンターレのチームが参加し、4位、5位ととてもいい成績をあげてくれました。大会MVPも両チームの選手が選ばれました」
――最後に、日本サッカー界、選手、ファン、子どもたちへの熱き応援メッセージをお願いします。
「『ダノンネーションズカップ』はサッカーの大会ではありますが、勝つことが目的ではなく、参加することが目的であり、大会で子どもたちはいろいろ経験をします。海外の同世代の子どもたちと触れ合って、フェアプレーやチームプレーを学び、さらには社会貢献活動にも参加します。試合が終わった後には、必ずそうしたプログラムが組まれていて、全員が自主的に加わっているんです。子どもたちは社会貢献活動の意味を考え、それがどうして必要なのか考える力が芽生えてきます。また、子どもたちにとって遠い海外へ遠征するということは、なかには初めて飛行機に乗るというお子さんもいるでしょうが、とても大きな経験でしょう。父兄は同伴せず、監督・コーチと弊社の引率担当だけ。全て自分たちでやらなければいけないという状況で、子どもたちの独立心も育ちます。そうした経験ができる世界大会、2011年はスペイン・マドリードでの大会に向けて、全国の少年・少女のみなさん、ぜひ国内予選に応募してください。“夢を信じて!”」
取材・文:宮崎俊哉(CREW) 撮影:新関雅士 |