——御社のサッカー日本代表サポーティングカンパニーとしての取り組みについてお聞かせ願います。
「我々は2007年から8年間の契約で、サッカー日本代表チームのサポート活動を行っております。
社内では“ソニーサッカーproject”という形で取り組んでおり、その中心には社長、副社長や専務、役員などトップマネージメントの人間がメンバーとなっていて、現在では専務がサッカーでいうヘッドコーチ的な役割を務めています。その下にいろいろなワーキンググループを設け、個別に、時には共同して活動しております」
——サッカー日本代表のサポート活動をするうえでどのような方針を持たれているのでしょうか。
「我々はこのプロジェクトを販売促進はもちろん、ブランドマーケティングなども含めより広い領域での活動にしていきたい。いろいろな分野で全社員が関われて、かつ弊社の全資産が何らかの形で日本代表の役に立てるような、本当の意味でのスポンサーを目指したいと考えています。ですから社内でも『私は○○部だから直接には関係ないよ』ということにはならずに、全ての社員が何らかの形で関わりを持てるようにしています」
——ワーキンググループには、どんな種類があるんですか。
「例えば、私が所属するワーキンググループは、マーケティングコミュニケーションに関するグループになります。他にもカスタマーリレーションであったり、商品企画であったり、社内の活性化を目指したものであったり、放送機器ビジネスであったりと様々な形で各ワーキンググループが活動をしています」
——社員の方はみなさん、兼務といいますか、それぞれのお仕事の延長でサッカーとの関わりを持たれているわけですね。
「そうですね。それぞれの領域の仕事でサッカーのスポンサーシップというテーマとの接点を探していって携わっているのですが、通常の業務を超えて社内有志による活動がベースとなっています。結果としてこのプロジェクトは数十人もの社員が何かしらの形で参加する、組織に縛られない体制での活動に繋がっています」
——こういう組織ができてサッカーを支援されるようになると、社内のコミュニケーションも深まりますね。
「少しずつではありますが、関わる社員が広がっていくことでより強く感じています」
——サッカーを支援されるようになった狙いは?
「基本的には、我々が販売している商品というものがあります。まずはベースとなる広告宣伝活動の考え方、そこにサッカー日本代表をサポートする活動が、どのような関係にあるのかをご説明したいと思います。
以前よりマーケティング戦略上、昨今のメディアを取り巻く環境の変化に合わせてコミュニケーション手法を見直し、もっと『伝わる』活動をしようと発想転換を進めていました。具体的には“マス”から“一人ひとり”へのコミュニケーションということを言い続けていて、私どもの商品を含め具体的にニーズをもたれた個々の消費者の方と深い関係を築こうとしていたのです。ただ一方で、やっぱり世界がものすごく狭くなってしまうのではないか、とも考えたわけです」
——そこでサッカー日本代表チームをサポートした活動を始められたと。
「まさしくそうです。直接私どもの商品に関心のある方にはより深く、しかし同時により広い範囲の方々との共感を大切にしようと考えました。みんなと“共にある”ということを意識できて、一人ひとりが社会の中の一員として気持ちがつながるコミュニケーションを並立しておかなければいけないというのが背景にありました。どこか外の遠いところの話をするのではなくて、且つできれば我々がすぐ手の届くところ、感じられるところでことが起こっていくといいかなと。物理的な距離感もそうですし、本当に心の距離感も近いところでコミュニケーションを育んでいけることがとても重要なことだと考えたのです。そういう活動を行っておくことで、例えば商品について情報が必要になった時により有機的に自然と、我々にとって良い形で話が回っていくようになるのではないか、ということです。
ソニーが“生活者とどう繋がっていけるか”。それがブランドコミュニケーションのベースだと思っているので、サッカーをエモーショナルエンジン、エモーショナルステージとして活用できれば非常にお客様にとっても我々にとってもハッピーなものになるのでは、と考えたわけです」
——これまでのスポンサーシップとは異なる考えですね。
「当然試合会場に看板を出して、より多くの人にソニーという会社・商品へ興味を持って頂くことも重要なのですが、何かもっとできないものかと。今日、ネットが基本インフラとしてなっているわけですから、我々のWebサイトをベース基地、中継基地としてメッセージを発信してもいいのではないか、と考えました。ソニー商品との距離感も近くなりますし、もっとわかってもらいやすくなりますからね。Webスペースという無限なフィールドだからこそ出来ることがもっとあるのではないか、とも考えたのです。もちろん、リアルな場ともうまく連動することで、より効果的なマーケティング活動をしていきたいと考えています。
もし仮に、活動の場を競技場の中だけに限定したら、入場者数の5万人以外の人たちとはコミュニケーションがとれなくなりますよね。商品を通じてのコミュニケーションだけだとすると、商品を手にしなかった人とはコミュニケーションができなくなるわけです。ところが、ネットだったら気軽に24時間いつでも来ていただける。
我々でなければ提供できないこと、映像とか音とか情報とかを伝え、共有する。恐らくそれが、日本サッカー協会様からも期待されていることなのでは、と思っているのです」
——FIFAのサポートもされていますが。
「FIFAについても2007年から8年間、ソニーグループがグローバルにパートナーとして活動させていただいています。今回、我々は最高レベルのFIFAパートナーのひとつ“デジタルライフ”というジャンルにおいてパートナーシップ活動を行うに至りました。FIFAがソニーに期待するものは何か。それは、デジタルによって生活をもっと豊かに楽しくしてくれということ。我々が貢献できる領域はそこです。“Digital Technology & Entertainment”で人が健やかに過ごし、ソニーの商品やサービスを通じて、世界中でサッカーの楽しさをもっと提供したい、というのが我々のフィロソフィーです」
——まさに、“We are the team.”ですね。
「そうですね。そこでサッカーという、人々がエモーショナルに一つのことを通じて共有できる、巨大なインフラを利用したマーケティング活動への取り組みに至りました。この活動を始めるにあたり、まず一番最初に日本代表を応援するメッセージとして“We are the team.”というメッセージを立てました。共振する世間の一人ひとりという意味での“We”ですし、ソニーの商品一つひとつとサービスも含めた“We”、社員一人ひとりの“We”でもある。もっと言えば、日本代表選手もそうですし、日本代表関係者のみなさん一人ひとりともみんな一緒のチーム。サッカー文化を大切にする一人ひとり全員がひとつになって、みんなで歴史を作りましょうということです」
——具体的な活動を教えていただけますか。
「昨年“project Blue”というwebサイトを立ち上げました。映像や音声といった情報で、どうしたら日本代表の力になれるか、応援できるか、という考えに基づいて生まれたサイトが“project Blue”なんです。
具体的なお話をすると、まず動画映像による参加型コンテンツ「project Blue CLOCK」というものがあります。このクロックはカウントダウンになっていて、日本代表の試合開始時間を目指して表示されています。数字をよく見ていただくと、サポーターの動画メッセージのサムネイル画像でなっているんです。日本代表を応援する多くの人の想いを、2010年FIFAワールドカップ 南アフリカ大会への出場に向けて一体となることを共有できる場としてご用意いたしました。このコンテンツは“project Blue”のコンセプトそのものでもあります。ほかにも代表に関連するニュースやBlogパーツ、投稿動画映像を簡易編集できる実況ジェネレーターなどもご用意しています」
——そのほかのサッカー支援としては?
「現在においてスポーツの競技力向上において映像の力はとても大きなものであると考えています。日本代表チームでも、またサッカー指導の現場においても、色々な形で映像機器が使われていると聞いています。そのような現場において何か貢献できることがあるのではと、今後色々と取り組んでいきたいと考えています。また我々は日本代表を応援する人たちにも向けても、もっとサポートできないか、ということを考えています。サッカーそのものをもっと豊かなものにできないかと。サッカーの面白さは、まだまだいっぱい掘れる。
これほど世界がエモーショナルに盛り上がり、共有できる巨大なインフラは他にないのではないでしょうか。そんな中でのサッカーへの関わり合い方も、さまざまあっていいと思うんです。老若男女、プレーする人、応援する人、そういう人たちみなさんに、より多くそれぞれの楽しみ方を提供できるよう我々は活動していきたいと考えています」
取材・構成:宮崎俊哉(CREW) 撮影:新関雅士 |